私の体には暗部のいれずみがある。
「へーテマリさんも暗部なんだー」
なぜか羨ましそうな声でいのが言う。
「まあな」
私たちは待ち合わせの場所である団子屋にいた。
席は木の板にござを敷いただけの簡単なものだ。
砂の里では見られない光景だ。それは木の葉の里に砂嵐がないからだろう。
団子をほおばっていると、隣でいのの呟く声が聞こえた。
「……私も暗部になろうかな」
「駄目だ」
「えー?」
非難するような声。
「暗部は、多分山中が思ってるより、好いものではないよ」
「でもさー」
「テマリさんと、シカマルは付き合ってるんでしょ?」
水面に小石が投げられたぐらいの、動揺。
「なぜ知ってる?」
「幼馴染なめないでよ。忍術はあなたたちのほうがずっと上なんだろうけどね」
なるほど、心転身の術を使うだけはある。内面には聡いらしい。
いのはため息をついた。
「……私もナルトと同じことがしたい」
その待ち合わせの相手であるナルトとシカマルがきたのはそれから小一時間ほどたってからだった。
「ナルトおっそーい!」
といのが言う。
「うるさいってばよー。Sランクの任務なめるな」
ぎゃあぎゃあ騒いで歩く彼らを前に、テマリとシカマルは静かに並んで続く。
「あの子は、お前の初恋の女なのか?」
「はあ?」
「思いついただけだ」
シカマルはしばらく困ったように黙っていたが。
「……そうだよ」
それを聞いて、テマリはにやりと笑う。
「そうか。私も負けてられないな」
「めんどくせーな。なんの話だよ」
怪訝そうな顔をする彼を置いて、テマリは少しだけ足を早めた。
テマリは少しだけ本当のことを言わなかった。
シカマルとは付き合ってはいない。
だけどテマリがシカマルに好意を持っているのは事実だ。
後ろから風が吹く。それはまるで追い風のようだった。
PR