それはほんの数秒だったと思う。
「抵抗しないんだ」
キスをされたのは彼女なのに、彼女は笑い、彼は表情をくもらせる。
それでもどこかある種の期待がみてとれて、それにとどめを刺すかのように。
「無駄なことは嫌いなんだ」
とテマリは言う。
「抵抗なんて無意味だろう。うずまき、おまえが本気で私を求めるのなら」
それだけの力があるんだからと声に出してはないのにそう言われているようで、ナルトはテマリを遠くへと押しやり、そっぽを向いた。
「なんだやめるのか」
「続けて欲しかった?」
「いや、それにしてもこの葉の野郎はフェミニストばかりなんだな。それとも抵抗するほうが好みなのか」
「うるせーってばよ」
向こうを向いたままのナルトに、テマリは笑いを含んだ声で言い聞かせる。
「これでもくノ一だ。初めてなわけあるまい」
「木の葉じゃ色仕掛けはまだ先だ」
「だろうな。大人からみたらまだ子供だ。色気がない」
そういう彼女だってたったの二歳の差で。
ナルトはテマリのほうを見る。
同世代の誰よりも、彼女は大人だ。
いまさらながら十代の二歳という差に、見えない壁を感じた。
「いいことを教えてやろう」
「もういいよ」
「私は仮にも風影の娘だ」
「だから?」
「そうだな、今思い出した。任務以外でキスをしたのはお前が初めてだ」
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