木の上にナルトとテマリがいた。
ナルトはというと、今日は暇つぶし用の本を持ってきていた。
テマリが来たのは丁度二冊目を読み始めたころで、いまはもう半分ほどまで進んでいる。
彼女も真似て、その本の前編のほうを読み始めた。こちらはまだ十数ページしか進んではいない。
ナルトの影分身はどこか遠くへ行ったようで、うるさく思っていた喧騒は聞こえなくなった。
二人は他愛もない会話を交わす。
そこにいくつかドキリとさせられるような情報を混ぜるのは、彼女のイタズラ心なのだろうか。
「好きな人?」
ナルトが驚いてテマリに返す。
「私にいたら悪いかい?」
「いや構わないけど」
そう呟くと、本に視線を戻す。
その本は国の外の言葉で書かれた書物だ。
辞書がなくとも読めることは読める。
しかしもうすでに集中できる状態ではない。
ナルトはあっさり読むのを諦めて、本に栞を挟んで閉じた。
「なんか想像できないな。テマリが誰かを気に入るなんて珍しいんじゃないか」
「よくそこまで私のことを理解しているといいきれるものだ」
くくっと笑うとテマリは本に視線を戻す。
ナルトは少しだけ迷った末。
「誰?」
「死んだよ」
間を挟まずに答える。
まるで聞くことが分かっていて、用意していたようなセリフだった。
「聞きたい?」
そうテマリが言うので、ナルトはしぶしぶ頷いた。
テマリば微笑をたたえながら。
「なんでうずまきナルトに教えないといけない?」
なんて、意地悪をいってみせる。
ナルトはじゃあ聞くなってばよと言いながら。
「好きな女の理想くらい知っておきたいだろ」
そう言った。真顔なのはきっと強がりだ。
テマリは満足したように、そしてなにかを思い出すかのように目を閉じた。
「そうだな。なにから話そうか」
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