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アカデミーは非道くつまらなかった。
幼きころから書物に囲まれ、暗号解読をゲームにして遊んでいたナルトにとって全てがいまさらすぎた。
第一この任務からして火影の過保護さが伺える。
誰かに養わられるのがいやで暗部になろうと思ったが結局は大切な仕事は何一つやらせてはもらえない。
ナルトがいなければなかったであろう任務。
それらを全部分かっててじっちゃんはこの任務を出したのだ。
まったくもって腹ただしい。
別に優等生ぶる必要なんてない。
ナルトはそう割り切ると教室を抜け出し、アカデミーの中を探検することにした。
イタズラと割り切れる程度のレベルの罠を仕掛け教師の忍びとしてのレベルを見極めたり、隠れているのを見つけさせたり。
もっともナルトが本気で隠れたら三代目でもないと見つからないので手は抜いたが。
その結果を買ったばかりのノートに書き込んでいった。
一見落書きにしか見えない暗号で。
ナルトは自分だけの報告書を見直すと実に楽しそうに笑った。
しばらく歩いていくと秘密の隠れ家をみつけた。
隠れ家といっても一部のアカデミー生徒なら必ず知っている場所でもっぱらさぼるのに使われているらしい。
黙認しているのか本当にばれていないのか分からないが中忍レベルのかくれんぼくらいにならちょうどいいだろう。
ナルトはそこに体を隠し、少し考えるとノートになにかを書き始めた。
真っ白な空白に一つの落書きが増えた。
三代目は育て親。じいちゃんっこ。 PR
小さい頃かくれんぼをした時、よく木に登った。
視線より一段低いところや高いところにいるとみつかりにくい、というのは里の者からすでに学んでおり、アカデミーでのかくれんぼの成績は一番だった。
今木の上には二人の人間がいる。
そのすぐ下をナルトが通り抜けていった。
こちらは鬼ごっこ。
鬼は木の葉の里の大人だ。
「楽しいのか?」
木の上の人物、テマリがいう。
「まさか」
そう答えたのはナルトだ。
ちなみにいたずらをして、駆け回っているもう一人の自分は影分身である。
テマリはつまらなさそうに。
「なんだ。木の葉では忍びに子供らしさが求められるのか?」
「木の葉がじゃないよ。子供に子供らしさを求めるのはいつも大人だ。砂の里だってそうだろ?」
テマリがなにも返してくれないので、ナルトはちらりとそちらをみやる。
目が合うと肩をすくめてみせた。
「冗談だってばよ」
笑いもせず、テマリは訊ねる。
「なぜこんなことをするんだ?」
「目に見える悪ガキほうが安心できるんだよ。みんな」
「うずまきも?」
「そう。公共の場で悪意をぶつけるのは難しいからね」
テマリが見ている前で、影分身のナルトは盛大に転んだ。
飛び掛る大人を見ながら、ナルトはほんの少しだけ楽しそうに笑って。
「えった」
騙されてるよ。
アヤメの父は一楽というラーメン屋を経営している。
まるでそうなるのが当然というかのように、アヤメは小さなころから店の手伝いをしている。
時折同じ年代の子が楽しそうにショッピングに出かけたりしているのを見て、うらやましく感じることもあるが、今の生活を特に不満に感じたこともない。
今日は定休日で、アヤメは日常用品の買出しに出かけていた。
たくさんのビニール袋を抱え、店を出る。
夏はもう終わりかけていて、日は落ちるのが早い。
既に外は暗くなり始めている。
少し遅くなってしまったかなと思いながら、アヤメは無意識のうちに近道を選んで家路につこうとする。
路地の影から数人の男が走って出てきた。
やけに急いでいた彼らはすぐに視界から見えなくなる。
不思議に思ってそこを覗いてみると、傷だらけの少年がうつぶせになって倒れていた。
「君、大丈夫?」
駆け寄るアヤメ。
上半身を起こし、意識を確かめる。
忍のようにたしかなことは言えないが、命に別状はなさそうだった。
それでも重症なことには変わりない。
どうしようか思案していると、少年がうめき声をあげて目を覚ました。
アヤメは一息をつく。
「よかった。気がつい……」
よく見ると少年は綺麗な金髪碧眼で、頬には引っかき傷のような模様があり。
「……え?」
幼いころの、惨劇の記憶がフラッシュバックのように蘇る。
思わずアヤメは声を失くす。
この子は、九尾だ。
どんな表情をしていたのだろう。
少年は身を一人で起こすと、特に落胆したふうでもなく諦めに似た表情で笑ってみせた。
「ありがと」
それだけ言うと、その脇を通り抜けて歩き出す。
暗い路地に足跡だけが響き、すぐに止まった。
アヤメが振り返ると大人が二人、少年の前を立ちふさがっている。
少年はひょいと体を端によける。
だがその二人は立ち去らず、少年の体をゴミでもあつかうかのように蹴りだした。
「ちょっと! なにやってるんですか!」
アヤメが叫ぶ。
「なにって?」
男が聞きかえす。
「理由なら分かるだろ?」
彼の気持ちは分かりすぎるくらい分かる。
だけれどそれはけして少年に暴力を加えてもいい理由などではない。
「……やめてください」
すごく虫のよい話だと思う。
自分があれほど少年を傷つけたくせに、彼が傷つくのを見ていられないなんて。
「あんたにはなにもしない。だからおとなしくしてろ」
男がそう言う。
「人を呼びますよ?」
「そうして出てきた里のものがこいつを助けると思うか?」
「思わないです。でもあまり騒ぎになると火影様に罰せられますよ。木の葉の重大機密でしょう?」
もう一人の男がくだらないとでもいうかのように首を横に振る。
そして少年を殴る。
「やめてください!」
近くの家の明かりがつく。
片方の男がアヤメの口元を押さえ、手を上げる。
「黙ってろ!」
そして殴ろうとした拳は、アヤメには降りかかってこなかった。
「おい、おっちゃん。用があるのは俺だろ?」
拳をぎりぎりと握りあげているのは、その少年だった。
勝負はあっけなく終わった。
さっきまでやられていた少年とは別人のように、軽々と相手の急所をつき、気絶させてしまっていた。
騒ぎに気がついた里の人から逃れるように、少年とアヤメは別の路地へと入り込んだ。
「なんであんなこといったんだってばよ?」
少年が聞く。
「俺のこと、知っているんでしょ?」
アヤメは答えられない。
少年は歩み寄る。
そしてアヤメに抱きついた。
思わず目をつぶってしまう。
体が震えそうになるが、それを押しとどめる。
試されている、とアヤメは思った。
それならば、裏切ってはいけない。
ふとぬくもりが離れる。
アヤメは目を開ける。
少年はきょとんとした表情で首を傾げてみせた。
「……お腹、すかない?」
アヤメはそれだけをようやく言う。
少年はまだ不思議そうな顔をしている。
「私の家、ラーメン屋さんなの。食べていかない?」
自分でもなにを言っているのだろうと思った。
だけど、彼のぬくもりを知ってしまったから。
この子は九尾なんかじゃない。
アヤメは彼の手を引いて歩き出す。
「私、アヤメ。名前は?」
少年は戸惑ったまま、自分の名前を言う。
アヤメは彼の名前を呼ぶ。
少年は立ち止まる。
うつむきぎみで、なぜかひどく泣きそうな顔をして。
アヤメが彼の顔を覗き込む前に、少年はきゅっと手を握り返した。
スレナルがラーメンを好きな理由。
ごちゃごちゃと物がちらかっている。
男の子らしいといえばそれまでだが、本当のことを知っているいのにとってその部屋はひどく場違いに見えた。
ベッドの上に寝ているのは風呂上りらしい、下着姿のナルト。
髪はまだ濡れていて、白いシーツに灰色のシミを作っている。
体は、傷だらけだった。
「ナルト」
いのが呼ぶ。
本当はずっと前に気がついているくせに、たった今起きたかのように目を開けた。
「起きるの辛いかもしれないけれど。手当てするから」
血はほとんど止まっていたが、動いた時にまた開いたのか、体に描かれた線が赤く滲む。
こんなに怪我の治りが遅いの久しぶり、なんてナルトはおどけて言ってみせる。
「やっぱり一昨日の暗部の任務がきつかったかな?」
「暗部!」
予想外の単語に、いのが驚いて聞く。
「暗部なんてやってるの?」
「信じなくてもいいけど」
「信じるわよ」
山中いのは花屋の娘である。
自然と植物には詳しく、今も自分で調合した薬草を彼にあてがう。
「痛くない?」
いのが聞く。
「慣れってのは恐ろしいね」
「痛みに慣れるわけないでしょ?」
「うん。でも直ることに慣れてるから。怖くないんだってばよ。あんまり」
その言い方がひどくくやしかった。
「はい終わり」
そして背中を叩く。
痛い、なんてナルトは言うけれど、そんなものを信じるほどいのもお人よしではない。
「もう二度と、こんなことしないで」
「こんなことって?」
「黙ってやられることよ」
「それを言うなら相手に言え」
「ナルトは強いんだからやり返せばいいのよ。私の時みたいに」
「だって相手の数二桁だってばよ? 記憶操作めんどく……」
「シカマルみたいなこと言ってるんじゃないわよ!」
思いっきり叩いた。
流石に今回は痛かったらしい。
ナルトはうずくまる。
しばらくして、ナルトはチャクラの質が変わったことに気がついた。
顔を上げるといのが泣いていた。
「え、うそ? いのお前――」
「ナルトのバカー!」
いのはナルトを叩き続ける。
「ちょっ……いの! マジで痛えし! 止めろってば!」
いのがなにに対して泣いたり怒ったりしているのか分からず、ナルトは戸惑いながら抗議する。
ナルトは心配されることに慣れていない。
ナルトがいののことをサスケバカではなくいのと呼ぶのがすごく好き。
どうして暗部名を持ってないんだ?
読唇術と暗号を組み合わせて、そう言ったのはカンクロウ。
ここは風の里。
変化をせずともナルトを知るものは少ない。
変わりに風影の息子であるカンクロウが好奇心の目に晒されている。
ナルトは首を傾げてみせる。
本気ではないくせに。
カンクロウこそ、名に意味を持たせるほどロマンチストではない。
だが。
「呼ぶときに困るじゃん?」
それは音に出して訊いた。
「そっちの任務の時はいつも単独行動だから」
「あーなるほど」
「……大体」
俺たちに名乗る名前なんて本来必要ないはずなんだよ。
うんざりした言い方。
ビンゴブックに暗部名が記載されているカンクロウにとって、わからない話ではない。
二人は雑踏を見つめる。
そのままの格好でナルトが確認するかのように呟く。
「来た?」
カンクロウは普通の人には見えない、張り巡らされたチャクラの糸を辿り情報を読み取る。
まだ、ナルトの言うその気配は感じ取れない。
しばらくして包囲網の片隅に、よく知った姉のチャクラを見つけた。
スレナルトスレ砂続き。
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