ごちゃごちゃと物がちらかっている。
男の子らしいといえばそれまでだが、本当のことを知っているいのにとってその部屋はひどく場違いに見えた。
ベッドの上に寝ているのは風呂上りらしい、下着姿のナルト。
髪はまだ濡れていて、白いシーツに灰色のシミを作っている。
体は、傷だらけだった。
「ナルト」
いのが呼ぶ。
本当はずっと前に気がついているくせに、たった今起きたかのように目を開けた。
「起きるの辛いかもしれないけれど。手当てするから」
血はほとんど止まっていたが、動いた時にまた開いたのか、体に描かれた線が赤く滲む。
こんなに怪我の治りが遅いの久しぶり、なんてナルトはおどけて言ってみせる。
「やっぱり一昨日の暗部の任務がきつかったかな?」
「暗部!」
予想外の単語に、いのが驚いて聞く。
「暗部なんてやってるの?」
「信じなくてもいいけど」
「信じるわよ」
山中いのは花屋の娘である。
自然と植物には詳しく、今も自分で調合した薬草を彼にあてがう。
「痛くない?」
いのが聞く。
「慣れってのは恐ろしいね」
「痛みに慣れるわけないでしょ?」
「うん。でも直ることに慣れてるから。怖くないんだってばよ。あんまり」
その言い方がひどくくやしかった。
「はい終わり」
そして背中を叩く。
痛い、なんてナルトは言うけれど、そんなものを信じるほどいのもお人よしではない。
「もう二度と、こんなことしないで」
「こんなことって?」
「黙ってやられることよ」
「それを言うなら相手に言え」
「ナルトは強いんだからやり返せばいいのよ。私の時みたいに」
「だって相手の数二桁だってばよ? 記憶操作めんどく……」
「シカマルみたいなこと言ってるんじゃないわよ!」
思いっきり叩いた。
流石に今回は痛かったらしい。
ナルトはうずくまる。
しばらくして、ナルトはチャクラの質が変わったことに気がついた。
顔を上げるといのが泣いていた。
「え、うそ? いのお前――」
「ナルトのバカー!」
いのはナルトを叩き続ける。
「ちょっ……いの! マジで痛えし! 止めろってば!」
いのがなにに対して泣いたり怒ったりしているのか分からず、ナルトは戸惑いながら抗議する。
ナルトは心配されることに慣れていない。
ナルトがいののことをサスケバカではなくいのと呼ぶのがすごく好き。
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