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どこの領土でもない、国と国との狭間。
薄暗い森の中、いくつもの死体があった。
真ん中には少年がいる。
体に纏う赤いそれ。
当然それは自分の物などではなく、返り血だ。
暗部服を着た彼は面を外し、ため息をついた。
「……やってくれるじゃねえか」
ナルトが振り向くと、そこには彼らがいた。
闇に生きる物であれば誰でも知っている、その話。
「聞いたことがある。任務成功率百パーセントの化け物」
「だから誰だよ」
「名前がないから代名詞で言ってるんだろ。誰も知らないし、見たこともない」
「そいつ、本当に存在するのか?」
「……俺らが足止めくらいまくっている例の任務、それを邪魔するようにと木の葉に依頼されているらしい。推測だけどな。どんな里でもこなせない任務が一つ二つあるもんだ。だけどここ十年の間、木の葉の手に負えなかった任務はない」
その暗部は息をつく。
「木の葉最強の忍び。分かってるのはそれくらいだ」
「その最強の忍びがあんただったとはね。灯台元暗しだ」
そう言ったのは女の方の砂の暗部。
「なに言ってるんだ。バレてなけりゃ自分から面取ったりしねーってばよ」
ナルトは嫌そうに血を拭う。
そして二人の名前を呼んだ。
「テマリ、カンクロウ」
男は少し戸惑ったようだったが、女はすぐに素顔を晒した。
ナルトの予想に違わずに、縛られていない金髪が闇に流れる。
男の暗部はため息をつく。
「あー、こっちもバレてるんじゃん」
そして彼も顔を覆ってた布をとる。
いつもの化粧を施してないカンクロウがそこにいた。
ナルトは再び辺りを見渡す。
ふと、無表情になる。
「なんで、殺すわけ?」
怒りに似た、それでいて純粋な疑問が混じったその問いに、聞かれたほうが戸惑っていた。
「なんでって?」
「別に今のやつ等って、ただ里の外に出ただけだろ?」
たしかに里の機密が外に漏れるかもしれないが、それは仮定に過ぎない。
なぜそれだけで殺されなくてはならなかったのか。
そうナルトは問う。
「それが俺たちの仕事じゃん?」
「そうだったな。忘れてたよ」
「普通忘れるか?」
と、呆れた声で言ったのはテマリ。
ナルトは彼の目を見据える。
「俺は、人殺しはしない」
「まるで大量殺戮でもしたことがあるような言い方だな」
「したよ」
「それはお前じゃない。九尾だろ」
「へえ。知ってるんだ」
「木の葉ほどダブーとして扱われてないからね」
「……とにかく」
ナルトは自分に言い聞かせるかのように繰り返す。
「もう人殺しはしない」
「お前暗部だろ」
カンクロウが言う。
「基本的に生け捕りのほうが都合いいだろ。お偉いさんがたにはさ」
「それが本人にとって死ぬより辛いことでも?」
「これから殺すって奴に感謝されても嬉しくねえよ」
そう言って笑うナルトは、笑顔だけで言うならば普通の子供にも見えた。
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初めて少年と対峙した時、彼が怯えもしなかったことにひどく驚いた。
「だって俺、化け物だもん」
化け物は自分のはずで、この子供はただの入れ物だと認識している者はほんの僅からしい。
もっとも狂人が狂ってることを認識しないのと同じで、自分のことを化け物だと思ったことは一度もない。
「里を救ったのは誰だと思ってる?」
戯れにそう聞いてみた。
里の大人に聞けば、必ず四代目と答えが返ってくるその質問を。
少年は少しの間考えて込むように黙った。
そして自分に指をさし。
「俺?」
「……可愛くない子供だな」
第一対面にて。
一枚のコインを弾き飛ばした。
それを空で掴むとそのまま甲の上へと叩きつける。
「表」
「表」
自分の物よりはるかに高い、少年特有の声が答える。
アスマは顔をしかめてみせた。
「被ってる」
「どうせそれ、両方とも表のコインだってばよ」
仕方なさげに手を離す。
残った手の甲には裏側のコインがあった。
それを見ても少年は動じない。
「これじゃない。さっきまで使ってたのはこっち」
少年がすっと手を上げると、アスマの中忍服の仕込みポケットが表から裂かれた。
僅かなその隙間から、両面の同じコインが音も立てずに落ちる。
鮮やかすぎるその手並みに。
「誰だお前」
「うずまきナルトデス」
バレネタもどき。
中忍試験の本選はもうすぐだというのに、彼女の服は汚れ一つついてなく、つまり特訓をしている様子がまったく感じられなかった。
「強くなりたいのか?」
泥と汗にまみれ、チャクラをほとんど使い果たして無様な格好で地面に転がっているナルトを見おろしながら、彼女が言う。
答える義務も気力もないので黙っていると、彼女は言葉を続けた。
「人は闇を知って強くなるのだから、強いことは威張れることじゃない」
彼女のセリフは淡々としていて、まるでひとり言のようで。
「それ、俺に言ってる?」
ようやくそれだけを言った。
彼女は笑みを顔に貼り付けると、半分くらいはと答える。
残りの半分はきっと彼女自身。ひとり言にも聞こえる話し方なのはそのせいだ。
風影の娘と器の少年の、強さについての考察。
いのは先生に言いつけられた通りに教材を教室へと運び込む。
今は休み時間。
教室に入るとあたりの喧騒から切り離されたように、音が一段遠くなった。
「あーもう。重い!」
いのが叫ぶと誰かの呻き声が聞こえた。
誰もいないと思い込んでいたのでひどく驚くが、すぐにその誰かを見つけた。
最後尾の列の端、ナルトが机につっぷして眠り込んでいる。
いのはなにか思い出したように、含み笑いをする。
ちょうどいい、なんて単語が頭に浮かんだ。
今度は意識して起こさないように彼に近づく。
そして、印を結ぶ。
「心転身の――」
その言葉は途中で遮られた。
印を結んだその手がなにものかによって捕まれたからだ。
驚くいのに、その人物は答える。
「なにやってるんだよ……」
そう、ナルトが言った。
「あんた誰?」
「ナルトだってばよ」
「うそつき。誰かが化けてるの?」
「俺に化ける暇人なんてそうそういない」
「じゃあなに? あんたは一瞬で私の後方に回って止めたっていうの?」
「そういうことになるってばよ」
いのはなんだか話がかみ合ってない気がした。
「大体俺がなにしたっていうんだよ。さっきの心転身の術だろ? 精神のっとるってやつ」
練習台、なんてセリフはとてもじゃないが言えなかった。
「……とにかく、下忍のレベルじゃないわよそれ」
「正解。いのは頭いいな」
いのはため息をついた。
「なんでそれ隠してるわけ?」
「九尾の器だから」
「え?」
彼が単刀直入に話し出す。
いのがその全てを理解するのには時間がかかった。
「まあ九尾の力なんて治癒以外に使ってないけど。こればっかは不可抗力だし」
「え? 使ってないの?」
「命狙われ続けてたらそんなものに頼らなくたってこうなる」
数十秒の沈黙。
「……なんで私に話すの?」
いのが訊ねる。
「友達だから? 信用できるから? そうじゃないでしょ」
ナルトは笑う。
「……いのは頭いいな」
そして壁にかかっている時計をみた。
いのもつられてそれをみる。
休み時間はあと五分だった。
そろそろみんなが帰ってくる。
「免疫つけてんの」
ナルトは話し出す。
「記憶操作なんて便利な術はあるけれど、完璧じゃない。俺だっていつまでもこんなことしていたくないし。だから真実を知らす前に、忘れられる記憶の中から慣らしていく」
いのはその淡々としたセリフを聞いていた。
「そうすれば、受け入れてくれる」
そういえば、といのは思う。
クラスメートが九尾を腹に飼っているなんて、もっと衝撃を受けてもいいはずなのに。
いのはくすりと笑う。
すでに自分は幾度も侵食されているのかもしれない。
そして誓う。
これが、最後。
「させないよ」
印を結びかけたその手を、今度はいのが押さえる。
「私は、忘れない」
青いその目を見据える。
そして、不敵な笑みを見せた。
ナルトが困惑している隙をついて、いのは駆け出す。
そして廊下の向かい側からくるクラスメートの中へと紛れ込んだ。
記憶操作されたかされなかったかは、また別のお話。
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