普段は暗い水の中にすっぽりと隠れていて誰にも見えない。
水面下では暴れてのたうちまわっているくせに、少しでも水位が下がり人の目に触れる状態になると、やっぱりみんなの望む姿だけがそこにある。
それはもう半自動的で、生きるために備わっている痛覚や反射と同じようなものだ。
少なくともその少年にとっては。
「暗部にならないか」
三代目火影がそう持ちかけたのはナルトが四歳のころだった。
ナルトは最初三代目が何を言っているのか分からなかった。
難解な言葉ではない。音にしてたった九字の言葉の意味を彼は知っていた。ただ理解できなかっただけで。
その感覚は望んでやまなかったものを不意に手に入れてしまい、持て余しているのに似ていたかもしれない。
言葉の実感は後からわいてきて、ナルトの顔が喜びの色に満ちていく。
「じっちゃん、それ」
本当だってば? と続く前に三代目はさえぎるようにして条件をつけた。
「ただし、それを治す努力をしろ」
ナルトの表情がうってかわって暗くなる。
それでも苦笑のような笑みを浮かべてしまい、言われたばかりのナルトはすぐそれに気がついた。
ナルトの口からごめん、と言葉が出た。
「ごめん」
もう一度そう言うとナルトは顔を歪ませる。
「もういい、ナルト」
火影が言う。
「今はできなくても努力してくれればいい」
通常スレ。きっかけ。
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