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 あっさりと動かぬ塊になった。
 手ごたえのないそれに高揚した体は熱くなったままだ。
 戦のない時代とはいえ忍の質も落ちたもんだ。
 そんなことを思いながらテマリは頬についた血を拭う。
 後ろに誰かの気配を感じるのと、空を切る音が聞こえるのはほとんど同時だった。
 扇をわずかにずらしそれで受け止める。
 肉と、鉄がぶつかり合う音。
 そいつの拳の皮膚が擦り切れ、血が流れる。
 ぎりぎりと力比べをするように押し合いながら、しばらくして、そいつはようやく顔を上げた。
「どうして殺した?」
 青い目がまっすぐテマリを見据えていた。
「殺されかけても殺しちゃいけないなんて、そんな理不尽あっていいと思うのか?」
「あんだけ力に差があるのに? よく言うってばよ」
 それだけ言うとその人物、ナルトはバタリと地面に倒れこむ。が、気を失ってはいない。
 腕で額の汗を拭い、そのまま目隠しをするように下にずらす。
 テマリはその場に腰を下ろす。
「助ける意味がなかったな」
「助けてなんて言った覚えはない」
 即答された答えにテマリは呆れたように肩越しに彼を見た。
「馬鹿みたいだな。痛めつけられて、黙っていられるなんて」
「俺はあんたのいう馬鹿でいいよ。だからもう二度とこんなことするな」
 声だけは強がってるが流石に辛そうだ。
 手当てをしてやろうかとも思ったが、どうせ受け入れるわけがないので黙っておく。
 そしてその必要もなさそうだ。
「九尾、か」
 ビクリ、肩が震える。
「なんで?」
「そんな能力見せ付けられて気がつかないとでも?」
 見る間に治っていく傷を見ながら、テマリは言う。
 なんでもないふうを装って、ナルトは起き上がる。
 起き上がる時にどこか痛みを感じたのか、ひどく苦い顔をしながら。
「サスケより嫌な奴だな」
「あんな甘い奴と比べられても」
「負けたくせに」
「本気で止める気なんてなかったんだ。別に酒客が暴れて木の葉が全壊しようと私が知るところじゃないだろう?」
「やっぱり嫌な奴だ」

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