アカデミーの放課後。
家に帰る準備をしていたヒナタはナルトに呼び止められた。
挨拶もなしにナルトが聞く。
「ヒナタ、昨日の夜誰かに会った?」
ヒナタは動揺を悟られないよう、なんでもないふうを装う。
痕跡はないはずだ。
仮にも相手だって暗部だし、ヒナタ自身隠滅させた。
「別に話したくないならいいけど」
そんなヒナタを見ながら、ナルトは言う。
「あんまり護衛もなしに一人でいるなってばよ?」
「なんで分かるの?」
「そうやってバラすから」
「はったりだったの?」
さあね、とナルトは肩をすくめて見せた。
彼はいつもこうだ。
そんなナルトを見ながら、ヒナタは聞く。
「ねえ、ナルトくん」
「なに?」
「大切な人、いる?」
そう言ってしまってから、ヒナタが前にも訊ねた質問だったことを思い出し。
「……あ、ごめん」
そう呟くように言った。
「いないんだったね」
「俺、ヒナタのこと好きだよ」
「ありがとう」
大切なものなんてない。自分自身すらも。
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