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試合開始の音が鳴った。
短くなった髪をつまんでみて、やっぱりバカなことをしたかな、なんていのは思う。
視線はテマリとテンテンの試合に向いていて、そのまま柵によりかかるように体重をかけた。
隣にはチョウジがいる。
めずらしくお菓子を食べていない彼もまた、目の前の試合を眺めている。
「それって同情?」
視線すら交わさない会話。
みんなの視線は試合に向いていて、誰も聞いてやしないけれど、どきりとした。
「どういうこと?」
「いのの心転身の術が、さくらなんかにやぶれるわけないでしょ」
うるさい沈黙。
砂のテマリというやつは結構できるな、なんてぼんやりとした思考で思う。
言葉を選びながら、いのは答える。
「……だって、もったいないでしょ」
どこかで言ったことのあるようなセリフだと自分でも思った。
「あの子は強くなる。それも私達のように闇に飲まれずにね」
お互いの肩に刻まれた烙印。
いのは自分のそれを指でなぞった。
チョウジはため息をつく。
「あーあ。いのがそうやって負けるんだったらボクも負けようかな」
「なーに言ってるのよ。あんたは本戦行ってもおしいものなんてなにもないでしょ」
「だってめんどうくさいもん。いのが受からなかった試験にボクが受かるわけないでしょ」
「それは……」
そしてアカデミーでの成績を考える。
いのは強い。けれどバカにされることは自分が許せないから、せめて下忍レベルでの一番の成績を維持している。
それに対してチョウジは強さを隠しきれているのだ。
今度はいのがため息をつく。
「好きにすれば?」
初のナルト以外のスレ。 PR
ナルトは先日付けで暗部になったばかりだった。
初任務はアカデミー内の調査と名家の生徒達の護衛。
「でもどうやって入ることにすればいい? 俺はまだ四歳だ」
アカデミーに年齢制限はないとはいえ、平均入学年齢より二歳も年下である。
器があまり優秀すぎても畏怖の対象になってしまう。
畏怖があれば混乱が起き、里に混乱が起きれば一番困るのは――本人達だろうに。
それでも育て親である三代目がいろいろと面倒をこうむることは目に見えている。
だからナルトは実力を誇示しない。それが九尾のおかげでもせいでもなんでもなく、努力による代物だとしても。
返事はなかなか返ってこない。
ナルトは一つの可能性に思い当たり、おそるおそると訊ねた。
「もしかして……じっちゃんそこまで考えてなかった?」
三代目はがっくりと肩を落とす。
「お主が四つの子供に見えないせいじゃ」
「俺のせいかよ!」
ナルトはふと考える。
初任務が不戦敗に終わるのは悲しい。
「じゃあさ、監視ってことでどうだ?」
ナルトは淡々と説明を始める。
家の中で虫を見つけてしまったら目で追ってないと安心できないように、危険なものは目の届く範囲に置くのが一番安心できる。
その心理を利用して、そういう噂を先に流しておいてから入学させてはどうか。
けして優秀だからじゃなく、九尾の器だから。
「それでいいのか?」
自分の境遇さえも利用してしまおうというそれに三代目は尊敬と悲しみの念を抱いた。
「なーにをいまさら。そんなに俺がかわいそうなら初めから封印しなけりゃよかったんだ」
けらけらと笑う。
「そんなの嫌だけどね。今の自分でなくなってしまうのは」
背負うモノ。バッカみてえ。
名前を呼ばれた。
振り向かなくてもとっくに気がついている。
それでもここは公共の場所で、だから聞こえないフリをする。
「ナルト!」
今度は一段階大きな声で呼ばれた。
ナルトは駆け出す。
その後ろを誰かは追いかける。
いくつかめの角。
その人物を待ち構え、その腕をひっぱると近くの使われてない教室の中に連れ込んだ。
ドアがしまる音。
ずいぶんな距離を走ったはずなのに、ナルトの息は少しも乱れてない。
そして振り向いて言った。
「テンテン。お願いだから、みんなのいるところでは俺の名前呼ばないでくれる?」
どうなるかはご存知の通り。
それはどうしようもないことで、どうにもならないことを知っているから、彼女達はいつもなにも言わない。
それでも彼女は彼女なりに理不尽を感じているらしく、その清算をつけるためにこんなことをしてくる。
「だってそれじゃ、なんか寂しくない?」
「寂しくないってばよ! テンテンたちになにかあったら、それこそ――」
そこで一度声がつまる。
ナルトはごまかすようにせきをした後。
「……今日のことはもういいってばよ。今度こんなことがあったら有無を言わずに記憶操作するから」
「えー嫌だなー。私達三人とも幻術に疎いもの。反撃できないじゃない」
それに、とテンテンは続ける。
「私達なにも知らないのよ?」
子供は十二年前の事件をなにも知らない。
教科書には載っているものの、封印された器についてはなにひとつ知られてはいない。
「大人達の負の感情を感じ取って、子供達に伝染しているんだとしたら。今度は私達から正の感情を伝染させればいいじゃない。そりゃあ大人は認めてくれないかもしれないけど……」
「それで?」
ナルトが聞き返す。
「それで、どうするの? 仲が良くなって、いつかそいつらにバレて、拒絶されたら? 全員が全員、テンテン達みたいに受け入れてくれると思う?」
「だからってこれからずっと認められることを諦めるつもり? 認めてほしいのは、いつもの演技とかそういうのは関係ないでしょ」
「そうだよ認めてほしい。でも今じゃない。テンテンが思ってるほど、俺は強くないんだってばよ。はっきりいって怖い」
むう、とテンテンはうなる。
「じゃあ妥協して。お昼は絶対一緒に食べること。誰も来ないいい場所。私達知ってるから」
そう言って指をつきつけるテンテン。
彼女達にすらまだ話してはいないことがたくさんある。
ひとつひとつの嘘をかみ締めて、ナルトは笑ってみせた。
友達の資格なんてないのかもしれない。
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よく考えたらこのカテゴリを使うのは初めてかもしれない。
お目当ての物にたどり着きやすいようにとそれぞれメニューページ作ってみました。
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アカデミーは非道くつまらなかった。
幼きころから書物に囲まれ、暗号解読をゲームにして遊んでいたナルトにとって全てがいまさらすぎた。
第一この任務からして火影の過保護さが伺える。
誰かに養わられるのがいやで暗部になろうと思ったが結局は大切な仕事は何一つやらせてはもらえない。
ナルトがいなければなかったであろう任務。
それらを全部分かっててじっちゃんはこの任務を出したのだ。
まったくもって腹ただしい。
別に優等生ぶる必要なんてない。
ナルトはそう割り切ると教室を抜け出し、アカデミーの中を探検することにした。
イタズラと割り切れる程度のレベルの罠を仕掛け教師の忍びとしてのレベルを見極めたり、隠れているのを見つけさせたり。
もっともナルトが本気で隠れたら三代目でもないと見つからないので手は抜いたが。
その結果を買ったばかりのノートに書き込んでいった。
一見落書きにしか見えない暗号で。
ナルトは自分だけの報告書を見直すと実に楽しそうに笑った。
しばらく歩いていくと秘密の隠れ家をみつけた。
隠れ家といっても一部のアカデミー生徒なら必ず知っている場所でもっぱらさぼるのに使われているらしい。
黙認しているのか本当にばれていないのか分からないが中忍レベルのかくれんぼくらいにならちょうどいいだろう。
ナルトはそこに体を隠し、少し考えるとノートになにかを書き始めた。
真っ白な空白に一つの落書きが増えた。
三代目は育て親。じいちゃんっこ。
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