× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 結局のところ、私は死ななかった。
助けてくれたのは、夜叉丸だ。 健康がとりえだった私も、流石に風邪をひいてベッドの上で丸くなっている。 夜叉丸が鉢で薬草をすりつぶしている。 あれは一般には毒草といわれているものだ。 しかし作っているのは毒ではない。その草はアクを抜いて、ほんの少量であればある病状によくきく薬となる。 だいたいにおいて全ての薬草は毒なのだ。調合しだいでどんな毒にもなる。 まどろみのなか、テマリは時間の感覚をなくしていた。 夜叉丸はすでにいない。 今の時間なら我愛羅の面倒をみているはずだ。 我愛羅に恐怖の心をなく、接することができるのは夜叉丸だけだ。 起き上がるとシーツが汗でべっとりと濡れていた。 それに思わず眉をひそめる。 砂漠の夜は冷える。それを承知で水浴びをする。 体を拭くともう具合の悪いところは見当たらなかった。 使っていたシーツを剥ぎ取り、新しいシーツを用意する。 古いシーツは洗濯かごの中に放り込む。 後は夜叉丸がやってくれるはずだ。 時計をみると、もう夜中だ。 それでも健康になったとたんに気がついたのはとてもおなかがすいていることだった。 台所にテマリは向かう。 そこにはカンクロウがいる。 「テマリ?」 私はまだ九歳で、カンクロウはたったひとつ年下の弟だ。 暗部であることを提示するような行動は起こしてないつもりだが、それでもなんとなく気がついているらしい。 嘘をついているような気分になって、カンクロウから視線をそらす。 「なんだ、まだ寝ていなかったのか」 「……今日は満月じゃん」 そういえばそうだった。 珍しくここ数日は雲が空を覆ったので、月の形など記憶してない。 守鶴が満月の夜にもっとも力を増す。 直接関係ないことにも思えるし、言われればたしかにそうなのだが、その守鶴を憑依させているのは私たちの弟なのだった。 「我愛羅は?」 「いつもの離れ」 静かな夜に、咆哮が聞こえる。 ひどいタイミングだと思ってテマリはため息をつく。 夜食は食べられそうにもない。 「いくよ、カンクロウ」 カンクロウは舌打ちをする。 「やっぱり、そうなるか」 テマリは忍装束を身にまとう。 それは暗部のものではない。 一人の砂の忍として、兄弟として、私たちは我愛羅を止める。 「大丈夫だ。我愛羅は私たちを絶対に殺せない」 「でも守鶴は容赦しないじゃん」 まるで嫌そうに言う彼も、とっくに装束姿だ。 結局のところ、血の繋がりなんてのはそんなものなのだ。 PR 何回目かの暗部での任務だった。 ザーと雨の音が聞こえている。 足をやられた。 夜叉丸は結界を張る。 木の上にナルトとテマリがいた。
ナルトはというと、今日は暇つぶし用の本を持ってきていた。 テマリが来たのは丁度二冊目を読み始めたころで、いまはもう半分ほどまで進んでいる。 彼女も真似て、その本の前編のほうを読み始めた。こちらはまだ十数ページしか進んではいない。 ナルトの影分身はどこか遠くへ行ったようで、うるさく思っていた喧騒は聞こえなくなった。 二人は他愛もない会話を交わす。 そこにいくつかドキリとさせられるような情報を混ぜるのは、彼女のイタズラ心なのだろうか。 「好きな人?」 ナルトが驚いてテマリに返す。 「私にいたら悪いかい?」 「いや構わないけど」 そう呟くと、本に視線を戻す。 その本は国の外の言葉で書かれた書物だ。 辞書がなくとも読めることは読める。 しかしもうすでに集中できる状態ではない。 ナルトはあっさり読むのを諦めて、本に栞を挟んで閉じた。 「なんか想像できないな。テマリが誰かを気に入るなんて珍しいんじゃないか」 「よくそこまで私のことを理解しているといいきれるものだ」 くくっと笑うとテマリは本に視線を戻す。 ナルトは少しだけ迷った末。 「誰?」 「死んだよ」 間を挟まずに答える。 まるで聞くことが分かっていて、用意していたようなセリフだった。 「聞きたい?」 そうテマリが言うので、ナルトはしぶしぶ頷いた。 テマリば微笑をたたえながら。 「なんでうずまきナルトに教えないといけない?」 なんて、意地悪をいってみせる。 ナルトはじゃあ聞くなってばよと言いながら。 「好きな女の理想くらい知っておきたいだろ」 そう言った。真顔なのはきっと強がりだ。 テマリは満足したように、そしてなにかを思い出すかのように目を閉じた。 「そうだな。なにから話そうか」 ずっと書きたかったスレ砂シリーズ。 |
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